かりでなく、五ヵ月の相違で、母をその誕生によって悦ばすことの出来なかった太郎や未来のその弟妹たちにとっても、やがて、よき祖母からのおくりものとなるであろうことを確信する。この文集の完成にあたって、私はこのことのかげに在って表には語られていない父の亡き母に対する情愛の貞潔なる濃やかさに、娘として深き感動を抑え難いのである。
 よみ難かった母の原稿の浄書から印刷に関する煩瑣な事務万端について援助を惜しまれなかった私の親友壺井栄夫人に感謝する次第である。
[#地付き]〔一九三五年七月〕



底本:「宮本百合子全集 第十七巻」新日本出版社
   1981(昭和56)年3月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房
   1953(昭和28)年1月発行
初出:「葭の影」中條葭江(母)追悼録のあとがき
   1935(昭和10)年7月発行
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月15日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られ
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