っと七つ八つの頃でござりましたもののう、お可愛ゆいまっ最中でのう。
王  わしはもう悲しい事に一つも覚えて居らぬのだ、それにその後間もなくわしは沢山学問を致さねばならなかったのでよけいに忘らされてしまったのじゃ。
 あまり早くから学者のむずかしい八の字だらけの顔を見たものの特典でのう。
老人 ああ、ああ、ぶしつけでござりますがわたくしはもう眠とうなりましたでの、居眠りながら貴方様とお話致すがまことにうれしいのでござる。
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大変年を取った老人は苦のない安らかな顔をして王の手を持ったまま長椅子の少し前よりもはじによった方に行く。
王の顔にはたえがたい苦痛の色が現れて居るがこの老人の話に幾分まぎらされて居るらしい様子。
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王  いくら暖いと申しても冬じゃ、意志[#「志」に「(ママ)」の注記]の悪い風邪《かぜ》にとりつかれるといけぬわ。
老人 貴方様ばかりでのう、そう云うて下さるのも。
 ――――
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涙もろく老人はうるんだ声で云う。
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