窓の小さいのが三つ位開いて単純な長方形のガラス越に寒そうな青白い月光の枯れ果てた果樹園を照らしてはるかに城壁が真黒に見える。
長椅子からよっぽどはなれた所に青銅製の思い切って背の高いそして棒の様な台の上に杯の様な油皿のついた燈火を置いて魚油を用うるので細い燈心から立つ黄色い焔の消えそうなほどチラチラする事が多くうすい油烟が絶えず立つ。すべてよっぽど更けた夜の様子。
幕が上ると王と守役を勤めた老人が長椅子に一緒に腰かけて居る。
王は冠をつけず寝間着の様な袖口の極くゆるい、長から下まで一つづきの深緑の着付。
手に沢山指環をはめる。少し疲れたらしい眼色とわだかまりのある眉の様子。
老人、もう九十以上の年で髪も眉も皆白くてつやつやしいおだやかな様子で真白な毛のついた足一っぱいの上着をつけて首から小さい銀の十字架をつるす。
王の親の様な心持で只やたらに可愛と云う気持。
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王 月があまり美くしいので都娘にフト出会った百姓娘の様にいろいろなものは皆黙って居るわ。
老 ほんに静かでござりますのう。
私がまだねんねえで世間知らず
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