すべてに再び新な力のあたえられた時――
 愚なものにはよう見えなんだ神の御力をたたえ謝さぬものは御座らぬのじゃ。
 浅間敷くサタン奴に魅入られた欲心に後押しされて他人のものをことわりなしに我家に持ちかえった事をとがめられて、厳な司法官の宣告書にふるえの止まらぬ体をそのままただ一坪の四方は皆叩いても音の出ぬ石のただ一つ小窓の開いた牢獄につながれた時の罪人の、故里に待つ親しい者共の身を思い出いて流す涙はさぞ熱うさぞ多い事でござろう。
 したが只一人闇の中に座して己の四辺を包む闇の中にひびく責悪の声を身にしめてつくづくと己の罪を悟ゆる時声高に呼ぶのは誰の名でござる。
 救うて下されと祈るのは誰の徳をしとうてでござる。
 偉大《おおい》なる神の御名を呼び、
 高い神の御徳をしとうておすがり申すのでござるじゃ。
王  お事は大なる神の御そば近く居ると申いてわしの領分のうちにお事のその強い音を出す翼で走り廻ろうと致すのじゃ。
 わしは只己を信ずる許りじゃ。
 神によって奇蹟は現わるると僧侶達は申してじゃ、
 己を信じて己の力を祈って進んだ時にばかり驚くべき奇蹟は現れるものじゃ、神の御子じゃと申いて
前へ 次へ
全66ページ中23ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング