十字架がかかってまぼしい様にチラチラと光る。
厚い髪を左右にピッタリとかきつけて心持下を向く法王の後からも、先に進む人と同じ様子に続いて沢山の宮人がついて行く。
おだやかに静かな行列は広場の中央をよぎって順々に見えなくなる。
息をつめた様な様子をして三人の女は消えて行く行列をながめる。
すっかり見えなくなった時三人同時に顔を見合わせる。
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 「いらしったんでございますよ。
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第二の女が云う。
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第一の女 ほんとうにねえ――とうとう。
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低く云って指環の多い方の手で十字を切る。老近侍は法王の去った方をじっーと見つめる。
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[#地から1字上げ]静かに幕

    第一幕

     第二場

    場所
  王の場内の一部

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景 太い柱が堅固ラシクスクスクと立ちならんで、上手中央下手に左右に開く扉がある。
四方にはドッシリした錦の織物を下げて床には深青の敷物を
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