て永遠の勝利者としては生きかねた一個の人間の運命が「こゝろ」の「先生」に描き出された。「行人」から引つづいて「こゝろ」が書かれたことには、見落せない漱石のきびしさがある。一郎が「こゝろ」の主人公のようなめぐり合わせに立ったとして、生きとおせるものかどうか、そのことが追究されている。「行人」で二郎がもっと激しい人間であったらば、と様々の局面を想った作者の心持がKという人物をとらえたとも思えるのである。[#地付き]〔一九四〇年六月〕



底本:「宮本百合子全集 第十一巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年1月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
親本:「宮本百合子全集 第八巻」河出書房
   1952(昭和27)年10月発行
初出:「新潮」
   1940(昭和15)年6月号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年2月17日作成
青空文庫作成ファイル:
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