ーの軍隊(それは日本[#「日本」に×傍点]の軍隊にも云えることだ)の下劣な体刑、重い背嚢を脊負って忠誠[#「忠誠」に×傍点]のしるしとして幾時間も捧げ銃をしていることは、どこにも見られないことだ。赤軍兵士の生活について、さきに引用した一英国人の手記を紹介しよう。
「ロシアに於ける多くの愉快な経験の中で、私は、カザンに於ける赤軍の兵営の訪問のことを憶い起す。私は、初め大した興味は持っていなかった。兵営は広々として、清潔であった。兵士達は充分のものを着ていた。そして食物はうまそうであり、又分量豊かでもあった――士官達が私に談《はな》したように、ポーランドの軍隊で指定されているよりも、数百カロリー優っておった。兵士たちのために与えられている社交生活は、退屈を訴える余地を少しも残さなかった。というのは、壁に貼った図表に従って、毎晩劇や、キネマや、演奏会が彼等のために開催せられておったからである。一般的な政治的雰囲気は、読書室の『レーニンの隅』で供給せられた。一つの部屋では素人劇団が稽古をしておった」
「吾々は、他のどんな軍隊においてもこういう情景を、想像することも出来ない。然しそれは、この革命
前へ 次へ
全59ページ中54ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング