は、警察的抑圧によって立候補の権利すら剥奪されている。社会ファシストは天皇制[#「天皇制」に×傍点]の正体を蔽うこの偽瞞的議会のおこぼれをたたえ、労農大衆に議会による救済、議会の勝利による労農大衆の勝利等の幻想をふりまいている。が、野蛮極まりないブルジョア・地主的天皇制[#「天皇制」に×傍点]支配の機関の一つであることを絶対見逃してはならない。
 三・一五、四・一六の日本共産党の同志に死刑・無期懲役、その他合せて、一千二百年以上という人類史上、未曾有の求刑を下しているのもブルジョア・地主的天皇制[#「天皇制」に×傍点]支配である。裁判所には皇室[#「皇室」に×傍点]の紋章[#「紋章」に×傍点]が勿体らしくほり込まれ、役人共は天皇[#「天皇」に×傍点]の「委任」によって、労働者・農民を抑圧するのである。既に三千人余の共産主義者を牢獄にたたき込んだ治安維持法は、天皇[#「天皇」に×傍点]の安全と利益を守ることを最大の目的とした悪法である。
 このように、日本の天皇制[#「天皇制」に×傍点]支配は、立法権も行政権も司法権も軍事権もすべて一手に治めている。このブルジョア・地主的天皇制[#「天皇制」に×傍点]国家の支配は、あらゆる人民大衆を、全く政治的無権利の状態においている。日本ほど警察権力が横暴を極め、又一方無自覚な人民大衆が、警察に対して、恐悸を持っていることは世界に稀だ。既に、幾多の革命的闘士が日本警察・監獄・憲兵の鬼畜の如き暴力によって、虐殺[#「殺」に×傍点]され、不具にされた。日本のブルジョア・地主はこの天皇[#「天皇」に×傍点]を最も強い背景として、労働者・農民の搾取・抑圧に耽っている。
 実に日本におけるブルジョア・地主的独裁の武器としての天皇制[#「天皇制」に×傍点]支配は、西欧のどこのファシズムよりも、ひどく野蛮な抑圧をしているのだ。
 以上触れてきた問題のみでなく、我々の目に触れ、耳に聞く日常の一切の現実は、新テーゼの、次の如き天皇制[#「天皇制」に×傍点]国家機構の解剖が全く正しいことを証明している。
「日本の天皇制[#「天皇制」に×傍点]は、一方では主として地主という寄生的封建的階級に立脚し、他方では又急速に富みつつある強慾なブルジョアジーにも立脚し、これらの階級の棟領と極めて緊密な永続的ブロックを結び、仲々うまく柔軟性をもって両階級の利益を代表し、それと同時に、日本の天皇制[#「天皇制」に×傍点]は、その独自の、相対的に大なる役割と、似而非《えせ》立憲的形態で軽く粉飾されているに過ぎない其の絶対的性質とを、保持している。自己の権力と自己の収入とを貪慾に守護している天皇制[#「天皇制」に×傍点]的官僚は、国内に最も反動的な警察支配を布き、国の経済および政治的生活に於てなお存するありとあらゆる野蛮なるものを維持するために、その全力を傾けている。国内の政治的反動と一切の封建性の残滓の主要支柱である天皇制[#「天皇制」に×傍点]的国家機構は、搾取階級の現存の独裁の鞏固な背骨となっている。その粉砕は日本に於ける主要なる革命的任務中の第一のものと看做《みな》されねばならぬ。」(独文『インプレコール』四二号)
 (四) ソヴェトの権力は最も包括的なプロレタリアートの大衆組織であると我々は前に云った。実にソヴェトの権力は大衆と密接に結びついているところに、いかなる国家権力よりも民主的で強固だ。
 ソヴェトはブルジョア議会と違って法律を審議するのみならず、それを実施する国家権力である。ソヴェト代議員はブルジョア議会の代議士と違って生産点で大衆と結びついている。「都市ソヴェトは、それを通じて脈搏つ大衆の生命を感ずる、村落ソヴェトは常に標準的な農民と接触している」
 そして大衆は彼等が選出したソヴェト代議員を監視し、その活動を批判し、代議員が職責をつくさない場合には、いつでも召還し得る権利がある。かくして我々は次のことを知るであろう。
 ブルジョア・地主的日本の国家機構に於ける中央集権は、天皇[#「天皇」に×傍点]から小さい村の村長に至るまで一連の鎖によって固く繋がれた搾取と、抑圧のための中央集権である。ソヴェト政体においての中央集権は「労働者が自由意志によって己れの武装せる力を結合させ」たものである。
 次に、この二つの種類[#「二つの種類」に傍点]の中央集権を、比較的近似的に示している図解を掲げて、諸君の参考にしよう。(四九―五〇頁〔本巻五二四―五二五ページ〕)[#図「ロシア社会主義連邦ソヴェト共和国中央及地方機関ノ交互関係」P524、「我国之国家機構図」P525]
 (五) ソヴェト同盟の軍隊赤軍は、社会主義を建設しつつあるプロレタリアート独裁[#「独裁」に×傍点]の国家の重要な一部隊である。裁判所が、勤労大衆自身による社
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