主義社会へ進む唯一の途であることを公然とあらゆる場合に示している。そしてソヴェト同盟の広汎な労働者・農民大衆が、ソヴェトを通じての共産党による指導を支持していることは、既に革命後十五年の歴史が之を示している。
ところが日本帝国主義のブルジョア・地主的天皇制[#「天皇制」に×傍点]独裁は、議会や政党や、普通選挙等の道具をならべて、いかにもすべての人民が支配に参加し得るかのような幻想を撒き散らして残虐な抑圧搾取をほしいままにしているのだ。
それは国家の礎と称せられる日本憲法を一目見ただけで充分認めずにはおれぬ事実である。憲法第十一条にはこう明記されている。「第十一条、大日本帝国は万世一系の天皇之を統治す」「第三条、天皇は国の元首にして統治権を総攬し、此憲法の条規に依り之を行う」
或は、日本には帝国議会というものが存在しているから絶対的君主制[#「君主制」に×傍点]ではない、立憲君主制体であると云うものがあるかも知れぬ。然し、議会は如何なる権力によって絶対的[#「絶対的」に傍点]に支配されているか。これも憲法が明示している。「第七条、天皇は帝国議会を招集し、其開会、閉会及び衆議院の解散を命ず」更に進んで「第十一条、天皇は陸海軍を統御す」「第十三条、天皇は戦を宣し和を媾[#「媾」はママ]じ及諸般の条約を締結す」「第十四条、天皇は戒厳を宣告す」という諸条項を読んでも我等は「立憲」が全く似而非[#「似而非」に傍点]立憲政体であることを知ることが出来る。しかも、天皇の周囲には「諮問」「輔弼《ほひつ》」の名にかくされた独裁[#「独裁」に×傍点]支配の最も野蛮な遂行機関として、元老、内大臣、枢密院があり、特に封建的・軍事的支配のためには、天皇[#「天皇」に×傍点]を中心として専門の元帥府、軍事参院、参謀本部、海軍司令部等がある。中国侵略戦争開始以来、二人の皇族[#「皇族」に×傍点]が夫々参謀長、軍令部長に任ぜられている。
日本の軍事的天皇制[#「天皇制」に×傍点]支配こそ、高度に発達した独占資本を持つ日本帝国主義の侵略性を代表するものであることを示している。無限の権力を握るのは、強制徴兵令による(所謂ブルジョア一等国で強制徴兵令を採用しているところは、只日本・フランス・イタリーのみである!)約二十九万人の常備軍(武力)と、私有財産制を守るために張りめぐらされた警察力とを以て、勤労大衆を抑圧し、半封建的、半殖民地的搾取をつづけつつある一握りの少数者によって「搾取のためにつくられた強制のための特別の機構」こそ、絶対主義的、軍事的、警察的天皇制[#「天皇制」に×傍点]の帝国主義日本国家である。かくの如き日本ブルジョア国家が憲法を持ち、議会を持つというのも結果においては、勤労大衆に向っての卑劣な欺瞞として役立つに過ぎない。それは、天皇制[#「天皇制」に×傍点]支配が日本[#「日本」に×傍点]の資本家、地主独裁の野蛮な形態であるという現実を覆い、伝統的な神秘化によって、さも天皇[#「天皇」に×傍点]は本来、一種不可侵の道徳的優越性、絶対的尊厳を賦与されて綿々とつづくところの「神人」による支配であるかの如き迷信を、被搾取大衆に与える。憲法の保証する「集会の自由、言論の自由」「結社の自由」「出版の自由」がどんなものであるかということは、勤労大衆の眼を持ったすべての人は知っている筈である。集会で一言、半句も云わさない解散、検束、拘留は常例だ。家族的な集会にすら、警察の犬は襲撃している。
このような天皇制[#「天皇制」に×傍点]支配の本質の胡麻化しによって、支配階級の絶対主義的支配は円滑にされるばかりである。プロレタリアート・農民を搾取のもとに繋ぎとめようとして、支配階級の行う絶対主義強化の努力は、小学校の国語読本、歴史教科書類から、在郷軍人団、青年団、女子青年団等の反動組織をまで網羅している。忠君愛国主義が教化政策の根底におかれている。
同じくブルジョア・地主的天皇制[#「天皇制」に×傍点]の糊塗のために行われるものに普通選挙がある。然し、一度でもその資格調査をうけたプロレタリアート・農民は、それが決して大衆の声を反映させるために行われる普通選挙でないことを自覚するであろう。選挙権は満二十五歳以上、一ヵ年以上同一の場所に居住した男子(女子は全然除外)に限られている。実に複雑な制限が労農大衆の革命的代表を阻止する目的でつくられてある。(我々は兵役の義務は十七歳以上から課せられていることを忘れてはならぬ)被選挙権の制限は一層広汎で男子、満三十歳以上、而も立候補のために二千円の保証金を供托しなければならず、得票がその選挙区定員数を以て有効投票数を割った数の十分の一に足りない時は、二千円をそのまま没収するという規則がある。しかも、共産党の被告、共産党支持者
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