選挙・被選挙権を剥奪せられし者。
[#ここで字下げ終わり]
我々は、ある英人ソ同盟訪問記に書かれた、ソヴェトの工場における選挙の模様を次に引用することで、ソヴェトの国家体制についての理解を一層具体的にすることが出来ると考える。
「私がそこを訪問した時、それは事実上の選挙の何日か前であったが、工場の壁には、モスクワ市ソヴェトと、それよりも重要性の少い区《ライオン》ソヴェトへの、選出を求める候補者たちの、二つの人名表が掲げられてあった。そこには又、選出せられたメンバーが、死亡又は他の任務のために、長期に亙って欠席する際に、その代りとなるべき『代理人』の名をつらねたもっと短い人名表もあった。工場は、その労働者六百名毎に、一人の代表委員を選出する権利をもっていた。この工場の割当は、実際には十四名であった。ところがこの表は、それに十五名の名が列記されているという点で、特に目立った。その先頭に、レーニンの名が出ているのだ。レーニンは在世当時、そのメンバーであったから、彼らは尚、彼の記憶に対し、この感動的な敬意を払っているのであった。」「レーニンの名前の次は、彼の後を継いで、全連邦人民委員会議の議長となっているルイコフの名前があった。この工場は、革命闘争の際の先駆者であった、従って、それはその代表委員として、ソヴェト統治の、事実上の首領を選出する名誉を得るだけの権利があるのだ。残りの名前は、何れも元この工場で働いていた、労働者出身の人々の名前であった。十四名の内七名は、その表が示しているように、共産党員であった、一人は共産青年同盟員であり、他は皆『非党員』であった。十四名の中、三名は婦人であった。
[#図「ソヴェト選挙系統」入る、P516]
ここには又、その承認を得るために、選挙人に示されている、公認共産党員の、単に過半数だけを挙げた公の表があった。それに対立するような表は、何もなかった。どんな方法で、その表が作られたのか。第一の段階として、再び立とうと思う前年度のソヴェトの委員(選挙は毎年行われる)は、彼若くは彼女の活動に関する報告をする。次に工場委員会と、各種の範疇の労働者の小グループを代表する三百名の代表者との間で、一つの集会をもつ。この集会で、候補者の名前が提出せられるのであるが、それで屡々《しばしば》、各候補者の活動記録及び批評について、徹底的な討論が行われる。普
前へ
次へ
全30ページ中20ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング