論部会の報告は、おのずから、小説部会からの訴えが根拠のないものでないことを感じさせたのであった。
 今日民主的立場に立つ若い評論家は、新しい作家が成長してくるよりも早い速度と人数とで活動に参加しはじめている。それは、第三回大会で、理論部の報告をした人々のほとんどすべてが、去年の大会にはそういう部署についていなかった新人であったことをみてもわかる。
 新しく活動にしたがうようになった評論家は、それぞれにちがいながらある共通な困難をもっている。それは、これらの人々も日本のインテリゲンツィアとして、全人民の一部として、久しい戦争の年々の間、理性的文盲政策のもとに苦しみ、すき間から洩れる光を追うように、自分たちの生存と文学の理性を辛くももちこたえてきたと同時に、マイナスの面もさけきれなかったという事実である。
 戦争の年々の絶大なマイナスのために日本の民主化は今日混乱し、独善にはびこられてもいる。作家も評論家も、この混迷からまったく自由にはなっていない。日本の民主主義革命の現在の本質をはっきりつかまないところからおこるブルジョア民主的な自我確立論、または、実際の批評にあらわれたような部分的形象
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