めなさいね、
叱られるわ。
A 私何だか気味が悪いわそんな事、
何にも出なくって。
若し出たらどうなさるの、お母様はいらっしゃらないし。
C 立派な手足があるわねえ、おじさん。
旅 そうそう、私はこれから段々みがきのかかった手足でまだどの位の日数を歩いたら行きつくか分らない、行かなければならないところへまで毎日毎日歩かなければならないんですよ。
今日までのうちに私はどっさりいろいろのものを見ました。
森の木の枝に自慢の角を引っかけて玉にうたれた鹿だの、孔雀の羽根で恥をかいた可哀そうな鳥だの、片目をたのみすぎた罪のない驢馬だのねえ。
B まあそんなに?
私にはそんな事考えられないわ。
A そんな旅はいつまで続《つづ》くの。
来年まで?
さ来年まで?
旅 神様が御召しになる日までつづくんですよ。
もう少したつと貴方方も旅に御出かけにならなけりゃあならないんです。
野宿もしなければならず、川も渡らなければならない事をいつまでも覚えていらっしゃいね。
さあ、大変長いお話をしてしまった。
御覧なさい、
あんなに向うが暗くなって来ましたよ。
さあ、帰りましょう。
[#こ
前へ
次へ
全9ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング