こから4字下げ]
Cはじいっと何か考えて居る様に口を利かずに遠くを見て居る。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
A あら、Cちゃん、どうしたの。もう行くのよ、お話がすんだのよ。
C ええ、知って居るのよ。
何だか大変、私には重いお話の様に思えるわ。
行きましょう。
B ほんとに面白かった。行きましょう、さ。
A 有難うおじさん。
私きっと美味しいパンとチイズをあげるわ。
[#ここから4字下げ]
旅人を中にはさんで三人の子供は歩き出す。
そして順番にやわらかく、民謡の様な左の文句を口ずさむ。
[#ここで字下げ終わり]
雪の降る日に小兎は、
あかい木の実のたべたさに
親の寝た間に山を出で
城の門まで来は来たが(ここまでA)
赤い木の実は見えもせず
路は分らず日は暮れる
長い廊下のまどの下
何やら赤いものがある、(Bここまで)
そっとしのむで来て見れば
こは姫君のかんざしか
珊瑚の玉か恥かしや
たべてよいやら悪いやら
兎は悲しくなりました。(Cここまで)
底本:「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社
1981(昭和56)年12月25
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