私の頭の中に考えられた味は、ほんとうに不味い極く極く不愉快なものであった。
何でもない様でありながら、こんな下司な取りあわせをするかと思うとやたらに、かんしゃくが起った。
貧亡[#「亡」に「(ママ)」の注記]人の多い、東北らしい事だ!
こんな事も思った。
娘
娘だと思われる娘を私は此処に来てから一人も見ない。なにがなし淋しい気持がする事だ。
十五六の娘達は皆大変色が黒い、そして濁った声と、棒の様な手足と疑り深い眼を大方の娘がもって居た。
名をきいても返事もしないし、笑いかけてもすぐ後を向いてしまった。
一体この村は若い男も女もあんまり土着のものでは居ない処で、中学に村々から集る若い人達ほか居ないだろうとさえ思われるほどだ。
若い娘の居ない村は私にとっていかにも居心地がわるかった。
私は若い力の乏しい村はきらって居るのだ。
神官
八十を越して髪も真白になった神官はM氏と云った。
澄んだ眼と高い額とは神に仕えるにふさわしい崇尊さを顔に浮べて居た。
白い衣の衿は少しも汚れて居なかった。
しずかに落ついて話すべき時にのみ話した。
四十五
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