ということは、従来の「家」での離婚沙汰よりはるかに深い人間的分離を意味することと、わたしたちは真面目に理解しなければならない。
 家庭から妻が去り、夫が妻から去るということは、一時的にもせよ根底から家庭の崩壊である。子供たちがいるとき、子供は母を失うか父を失うかしなければならず、その痛手は、子供にとって実に痛烈である。結婚の自由、そして離婚の自由があるとき、すべての人は、女も男も、自分たちの心のなかに一つの声をきくと思う。――みなさまの責任は? みなさまの責任は?――と。

 第一次世界大戦のあとから、世界のすべての国々に離婚がふえた。結婚というものに対するそれまでの国々での考えかた、しきたりが、戦争の破壊力によって大変動を与えられたために。この原因は主として戦争によって女子人口が増加したことと、それまで生活の安定をもっていた中産階級の経済基礎がくずれ、勤労する男女が多くなったことにあった。ジェーン・オースティンの小説や「嵐ケ丘」でブロンテが書いたような、イギリスの中産階級の人たちの「ちゃんとした結婚」の観念もかわった。
 こんどの第二次世界大戦は、ファシズムに対して勝利した国々におい
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