ある。印刷工場などでは、その先そこにつとめようとすれば、未熟練工なみにおとされる。女教員でさえ四十一歳になった女教師は、新しく本任用しない東京都の内規がある。
離婚を要求する女性の理由のなかには、夫の乱れた生活は、妻としての自分に耐えがたいと同時に子供の教育にもわるいから、ということも珍しくない。離婚するなら子供はすてて出ろ、ということは、無慚な姑や夫が嫁に隠忍を強いるからめてからのおどかしとして云ったことである。自由になった離婚法で、不幸な妻は自分から離婚してよいことになり、その上母と暮したいと主張する三人の子をひきとって、一緒に暮さなければならないというとき、経済上自力でやってゆける自信のある妻は、いまの日本に何人あるだろう。イプセンの「ノラ」は、ノラが人形でなくなろうとして人形の家を出てから先にこそ、女性の社会的問題があった。このことを、きょうの若い婦人で理解しない人はない。うたう雲雀、可愛いい人形から、急に一人の女に転生しようとしたノラの前途に、ふせられていたこの課題は、きょうの日本の勤労女性全般の前に、ノラの時代より、遙かに具体的に矛盾の諸相を呈出している。
結婚の問題に
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