全くあなたがお丈夫でもトラックなしではすまないように、私が意気壮でも、手はかじかみましてね。歴史をひもとくと、燃き物と紙の有無とは、常にその社会生活の一般状態を雄弁に物語っているようです。作家の思いは、原稿紙がなくなればどんな紙切れへでも、その紙切れへものをかくような時代の作品を書こうと思っているのでしょう。歌をうたうかたは、唱って寒さもふきとばそうと思っていらっしゃるでしょう。そこがそれぞれ面白いところですね。けれども、どうぞ喉はくれぐれお大切に御活動下さい。
[#地付き]〔一九三九年十二月〕



底本:「宮本百合子全集 第十七巻」新日本出版社
   1981(昭和56)年3月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房
   1953(昭和28)年1月発行
初出:「読売新聞」
   1939(昭和14)年12月29日号
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月15日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られま
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