引下げながら合点する。――この意味ありげな表情を見せられた娘達はもう我慢を失なった。
「ねちょっと! 何なのよ、何があったの?」
「いじわるな人! 焦らさずにおっしゃいよ、早く! さ」
「私だって昨夜千代乃さんの御婚礼だなんて知らなかったのよちっとも。あれ何時頃だった? 八時頃? 縫子さんと二人してお湯から帰りに糸源へ廻ったのよ、丁度ほらあすこ千代乃さんちの先でしょう? こっちへ来ると千代乃さんちの前がひどい人だかりなの。何事かと思って私ドキッとしちゃったわ全く。いそいで縫子さんと行って見たら、それが、あんた千代乃さんの御婚礼なのよ」
「だって――表からどうしてそんなに見えたの?」
「わざと見えるように、お店をすっかり開けっぴろげてあるのよ。――千代乃さんのお母さんて、ほら――云っちゃ悪いけれど随分あれでしょう? だから見て貰いたくって仕様がないのよ――ああいう処を……」
米が同情と羨望をこめて呟いた。
「千代乃さんこそいい面の皮ね」
――皆が暫時《しばらく》沈黙した。やがて内気で年若なのぶが、
「千代乃さん綺麗だって?」
と訊いた。
「綺麗だったわ」
「島田?」
「そうよ」
「ど
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