に頓馬だわ、兄弟だなんて」
桃子は涙と一緒にそういって苦しそうに笑った。
「それ僕も同感だ」
「――そのこと、どう考えた?」
「だって、桃子、こうやって話す以上僕としては考えてみてのわけだろう!」
順助の調子は何と説得的だろう。桃子の心と体とはそういう順助の声の優しい重さに撓《しな》うばかりである。けれども、そのように瑞々しく撓えば撓うほど、桃子の肉体の内に一つの叫びが高まるのをどう説明したらいいだろう。
桃子は暗いあたりを力とたのむように思いつめた勢で、
「それでずっとやって行ける?」
といった。
「私こんなたちでしょう。私子供うみたいと思いそうなの――わかる? 私のいう意味がわかる? 私たちの心持。それだけのねうちもっていると信ずるの。だから、父さんたち、頓馬だっていうのよ。……でも、こんな気持男のひとにわかるのかしら――」
それは順助自身の感情としてもはっきり理解されることであった。二人のたっぷりした人間らしさ。たっぷりした互の気に入り工合、それは自然な生命の横溢を希っている。偶然な血族の関係から不具の子供をもったりすることを恐怖する桃子の若々しい自然の抵抗は、それだから
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