ことを女が代ってやるという単純なことではない。もしそれだけが協力なら、戦争の間は、最も大幅に協力があったことになる。兵営と前線生活では婦人のすることがすべて不幸な召集された男の手によってされていた。銃後では、家庭を破壊されたすべての哀れな女性が、軍の労働者に代って武器製造をした。これがどんな人間らしくない、不幸の図絵であったかということは今日すべての男女が知っている。いまだに疎開から家族のよびもどせない良人たちは、良人であると同時に、その自炊生活において妻である。そしてこれは全く不自然だと感じられているのである。
 そうしてみると、良人の協力ということは、今あるままの労力のひどい台所仕事をそのまま男もやってやるということではなく、台所家事仕事そのものにしろ、もっと時間をとらない合理的なものにしてゆくそのことに協力することであるとわかって来る。男と女とが、互にほんとに男らしく、ほんとうに女らしく、安心して自分たちの性の人間らしい開花をたのしみながら、めいめいの特色による職能の特徴も生かしてゆく状態であることがわかる。性別いかんにかかわらず法律のまえに平等である、という憲法の実現のあらわれ
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