矛盾とその害毒
――憲法改正草案について――
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)尤《もっとも》な
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ヌエ[#「ヌエ」に傍点]じみた性質を
−−
新聞に、憲法改正草案が発表されたとき、一番奇妙に感じたことは、「主権在民」と特別カッコの別見出しがつけられていたのに、天皇という項があって、その唯一人の者が九つの大権を与えられていることであった。
短い小説一つにしろ、それが小説であるからには、テーマが一貫している、ということが第一条件である。どんな通俗作家でも、小説の主人公が、突然中途からすりかえられているような分裂した作品は、通用しないことを知っている。
憲法は一国の政治の基準をなす重大なものだのに、草案の起草者たちは、常識からも明白なこの誤り・失敗について、どうして平気なのだろうか。本当に奇怪なことだと思った。
草案第十三条に「すべて国民は法の下に平等であって、人種・信条・性別・社会的身分・又は門地により政治的・経済的・又は社会的関係に於て差別を受けない。云々」とある。
なるほ
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