ど、これは尤《もっとも》なことだとして読んだ私どもは、翻って、第一、天皇というところに、その特権の身分が世襲であり、人間としての資質如何を条件ともせずに、天皇たる世襲者が、憲法改正から法律・政令・条約の公布以下、政治上の実権の重要な点を押えていることを発見して、おどろきを深めた。
 婦人に参政権が与えられ、民主日本の成長のために、と、表面にぎやかに啓蒙がされているけれども、婦人の二千九十一万余票を加えて代議士を選出し、成立した議会を、天皇という身分の人が、その意志で解散させることが出来るのだとしたら、何と選挙そのものが一場の苦々しい猿芝居であるだろう。天皇は衆議院を解散させる大権も与えられているのである。
「すべて国民は」と、堂々発言した人権、或は民権の主張は、どういう論理の間違いからか「人」の規定のなかに入れられていない筈の世襲の特権・門地・特権地位者を、引出して来て、肝心の主権をそっくり人民の手の中から其方へ握らせているのである。
 主権在民ということは、最少限に考えて、人民自身が、行政、司法、立法の全権を有すという意味であろうし、議会の権能も、当然人民の内から選ばれた代表――議員
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