政治的な政略上、私たちのおくれた感情を足場として、自党の政権欲の満足のため、不具な憲法改正草案によって反動性を正当化されながら、再びこの私たちを虐げようとするならば、いかにお人好しの私たちでも、それが天皇制の功徳であると、跪きかねるであろうと思う。
総選挙が迫ったこの頃、連合国司令部に、その結果によっては議会の再解散する意嚮があること、対日理事会として、当選議員の資格審査も行われるだろうと云われているのは、肯ける。国際的な注目は、今度の総選挙の日本の民主化に対する危険性を見ぬいていた。その深い危険の温床は、ほかならぬ憲法改正草案の欺瞞性に在るのである。
天皇に、拒否権の無いことを明示していないのは、臨機応変的解釈の危険がある。ところが、この頃自由党は、却って天皇に拒否権を与えようと大いに努力している。その自由党の鳩山一郎氏は、日本を救う人民戦線は拒絶して、反共戦線というものを宣言した。四月六日の『読売報知』には、ヒトラー、ムッソリニ礼讚の自著『世界の顔』についての、外人記者との対談で、「武士道は日本精神の精髄で、ナチス精神との間には多分の近似性がある」と、心ある全国民を戦慄させる断
前へ
次へ
全8ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング