無題(二)
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)必[#「必」に「(ママ)」の注記]して
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世間知らずで母親のわきの下からチラリチラリと限りなく広く又深いものの一部分をのぞいて赤くなって嬉しがったりおびえたりして居る私の様なものが、これから云う様な事を切り出すのはあんまり荷のかちすぎた又云おうと思う全部は必[#「必」に「(ママ)」の注記]してつくせまいとは思いながら、まだ若い何でも自分の考えて居る事を信じて居易い時の私の心は、それを思ってひかえて居る事が出来ない。思ったまんま間違ったものは間違ったなりに書きつづけて見る。
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私の様なまだ知った様で世の中を知らないものは、自分の愛し又高いところへ置いて尊がって居る何でもをひきずりおろしてきままにされると云う事が、まことに自分の誤ちを知った時よりもつらい。
とうてい目を開いて又泣かないでは居られないほどに感じる。
丁度恋人の陰口をきいて逃げかくれる人の気持を持たなければならない。
何にかぎらず芸術と云うものを私は一通りでなく
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