ママ」の注記]しゃ」を地にした此の辺の人間が着る着物のような、プリミティブな可愛らしい感じを与える。
 色々の樹木が、肩を並べて立って居るようすは、都会のようだ。紐育《ニューヨーク》の建物を見て感じするような色と線の、交響楽を感じる。けれども、無人な或は、土の中のような色をした黒坊の母子が、放牧された牛などに混って、ぽつんと、野の中に立って居る様子は、非常に物淋しい心持がする。
 にぎやかな色、あかるい空、しかし歌をうたう心持はしない。暖い大地の、不思議な物懶さと、陰鬱が、にぎやかな色彩に包まれて澱んで居るのである。南部に近い温帯の眠たさ、永遠の晩秋で冬は来ないのだろう。風のない、ひっそりとした風景。

 耳の長いドンキに、綿をつんで、赤ちゃけた道をコロコロと転って行く黒人。

 南へ来るにつれて、初冬のかたさが、天地にうちにとけて、ほの暖く成って来る。

 Blacksburg(South Carolina)に来るとステーションに、Coloured, White と別にした札が下げてある。此からサウスキャロライナに入ったのだ。

 黒人の太い、しかしどこかに胡弓を弾くような響のある淋
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