無題(九)
宮本百合子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)彼[#「彼」に傍点]の意志に反する
−−
○温室の石井を呼びつける、
m 真中、右 石井(若い方 うなだれている)、左 石井
草の工合をきいているが 妙にからんで
「昨日よそへ行きましたら、カーネーションがのでんですっかりよく育って居りましたよ さし木をしてねエ、あれは温室でなくても育つと見えますねえ」
石「ずっと野天で生えているのをさし木すれば育ちます、種生はどうも……」
やがて
「奥さん、何かおこのみでこれを育てたいというような花がありましたら仰云って下さい」
「どうも 私どもは素人で一向わかりませんですが、主人がいろいろその方の専門家を知って居りますから……いつか博覧会の時でしたか 温室を専門にやった方で 今ではなかなかそちらの方のオーソリティーだという方を知っているのですが……石井さん、ききませんでしたか?」
「さア、承って居りませんですが」
「もし何でしたら その方にでも伺って見たら又 何とか……」
自分 たまらなくなって
「オーソリティ
次へ
全4ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング