手をほどいた時に白い影から美くしい声が起りました。それは詩人がいつかローズと一所に野に行った時に即興にうたった歓迎の詩をたくみないかにもよろこばしそうにうたいました。若々しい声は夜の空気の中に美くしい脈をうちました。詩人はよろこびにみちた声で、
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詩「有難う有難う、お姉さま。私の家に来てちょうだいナ」
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ロ「有難う。だけれ共もうおそいでしょう。あしたあがりましょう。私の美くしい弟、もうおやすみなさい、またあした。そこにいつまでも居るとどくですもの」と云いました。詩人はつまらなさそうな声で云いました。
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詩「エエ」
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両方共に声はありません。青い星がスーイと尾を引いて飛びました。闇の中にかすかな声で、
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詩「ローズ」
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と云う声が起りました。向うの白いかげもかすかな美くしい声で、
ロ「私の美くしい弟、早くお入りなさい、寒くなりますよ。いくら夏だと云っても、もう入りましょう。又あした。私
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