う彼の不思議な女と四月もくらして居たのだ。そして私はその間に不思議な所も見不思議な話もきいた。私は此れからそれを書かなくては。そろそろ私は早くかえらなくては。あの時ローズは私の手をにぎって涙を流しながらもほほえんで『私はネ貴方と遊べなくなるのがそれは悲しいのだけれども貴方のためだから泣きますまい。私は貴方のかえるまで誰とも遊びますまい。私のまって居るのを忘れてはいやよ』って云って私を送ってくれた。ほんとうにさぞまっていたんだろう。そうだ私は」と嬉しさのこもった声で云って前よりも一層早足で歩き出しました。やがて向うに六角の家が見えました。あれこそ若い旅の人の家とローズの住居なんですの。
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詩「見えた見えた」
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と呼んだ人はもうたまらないと云ったように走り出しました。六角の家の南がわの家の一番すみの窓に向って笑をまじえた美くしい声をはりあげて、
詩「ローズローズ、今かえったの」嬉しさに声はふるえています、やがて階を下りて来るかるい足音がきこえ出しました。重々しい扉はかるく開かれて闇の中にういたように白い美くしいかおがあらわ
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