とはそれきり忘れていて、先晩、ある会で婦人の評論家にあった。中心の話題は文学のことであったが、偶然向い合わせに坐ったそのひとは、ねえ、あなたはどう思いますと、若い女のひとの中に結婚はいやだが子供は欲しいと云う人があることについて話すのであった。その席では、まわりとの関係でそのまま発展されずに終ったが、私の心の中に言葉は活々とのこされた。何故なら、私は前にも自分が同じことを従弟からきいたことを鮮明に思い出したから、そして、探究心を刺戟されることを感じた。
日本の若い女のひとの間にあるその心持というのは、本気かしら。本気ならば、何故彼女たちの感情はそういう形をもって女の新しい生活への要求を表現するのであろうか。そこには様々のものが錯綜している、そう感じられるのであった。
ロマン・ローランは有名な「ジャン・クリストフ」の中で実によく女の多様なタイプを描いている。それぞれに異った性格、生きかたをするそれぞれの女が驚くばかりの瑞々しさで極めて感覚的に、肉体と精神とで活かされている。「魅せられた魂」という長篇を、同じこの作家が書いた。アンネットという教養のある、深い心持をもった若い女が中心の人
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