又、家
宮本百合子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)苟且《かりそめ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]
−−
H町に近いのは、なかなか都合のよいこともある。仮令《たと》えば、何か急に客用のものを借りたい場合、病気で薬を頼みたい場合、決して調法でないことはない。が又、一方では、可成困ることがある。
自分達が、久しぶりの休日か何かで、悠くり二人限りの時を楽しもうとして居る時、不意に小林さん(書生)が来て、奥様が一寸直ぐ来て呉れ、と仰云います、等と強制される時、又、仕事のある時、小さい妹や女中が、のんきにふざけに来る場合。後者のときは、まあ自分一人の迷惑ですむ。が、前のような場合は、自分として、二重に不快と遠慮とを感じずには居られない。もう一つには、Aが、女子学習院に専任になることにもなったので、正月(一九二二年)から、自分は、又新たな住居を探すことになった。
片町からでは、単に往復するだけで、三時間
次へ
全14ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング