婦人作家は何故道徳家か? そして何故男の美が描けぬか?
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
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(例)最も有名な[#「最も有名な」に傍点]代表者アクセリロードは、
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父を殺している
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作者は巧妙な(しかし)極めて平俗な理由で息子の父を母の生活から切りはなし、父と母との矛盾をこの作において避けている。母は息子との間に矛盾を感じるばかりでなく、現代にあっては多く父との間にも矛盾を感じている例が、特に中流インテリゲンツィアの中に多い。
父は社会的に支配階級の或る構成要素としての地位をしめ、母は息子との父よりひんぱんな日常的接触と、若い息子(若い男)への愛にひかされ急進化し、父は反動化し、矛盾はその思想問題が日本の家庭内の封建性によって、結局母により深い秘密を持たしめるに到っている。作者の実生活は、この問題に全然無関係であろうか。否。否。逆であろう。だから作者がふれなかった。この賢さが、実質においては現代ブルジョア・インテリゲンツィアの婦人が進歩的な外見にかかわらず、内実強力に抑圧をうけて
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