かさというよりはむしろ、従来男のひとによって扱われた婦人の性の問題、恋愛、結婚、母と子との問題に対して婦人自身の情緒的な要素を加え、そういう問題にあたってほとばしる女の心の波そのものの主張がより多分の場所を占めた観がある。エレン・ケイの思想が歴史の二つばかり前の時代、世界の善良な心々にひろい反響をよびおこしたにもかかわらず、社会的な実行上の推進や解決への端緒は、彼女の思想的雰囲気からあふれた人々の手によってなされたということも面白い。
 婦人の文化上の創造能力の特質は直感的であり、感性的具体的で、その反面としては恒久性の短いこと、主観的であること、客観性や思意の力に欠けていることがこれまでのあらゆる場合に挙げられて来ているのである。そして、婦人というものはそういう風に生れついているものと我もろとも思うような傾きもあるのだが、はたしてそれは女の生れつきなのであろうか。それとも永年の環境からそういう習性のようなものが根深くあって、それが今日ではさながら本性のようになって見えるのではあるまいか。明日の婦人の創造力成長への課題は主にこの点への究明にかかっていると思われるのである。
 日本の婦人
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