う人の小説は新しいはっきりした日本の歴史における社会的地位を持っています。
戦争の間はみんなひどい目に遭いました。誰でもその時楽をした人はありません。それで、今日になって初めて自分達の口を抑えていたものがとれて、なにかというと私どもの手からペンを取上げて牢屋へぶち込んだそういう力はなくなった。今こそ私どもは日本全体が新しい民主的な日本になろうとする喜びの中に全身的に参加して行くという熱情を持っています。婦人参政権は文学という問題と違うけれども、政治は毎日の生活を処理して行くものであります、この頃のどさくさで金を儲けている人間もあるが、しかしわれわれはやはり困っています。そういうことについて現実の生活が教えている以上、一葉が文学と生活を一つものと理解することができなかった歴史に鑑みて、一葉が才能があったかなかったかの問題でなしに、今日私どもは一葉より才能が少いかも知れないが、しかし私ども全体はこのゼネレーションというものに誇りを持っています。今日の世界に生き、今日の日本に生きているという誇りと献身的な情熱を持っています。
それは、あなた方が今日話を聴きにおいでになるそのお心持の中には
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