それに対して女の作家も十分な闘いをすることができませんでした。それでみんな大変苦しい状態を過して、そういう歴史を経て、今日私どもの日本ではやっと民主化という声が始まりました。明治以来、初めてめいめいが一人の人民として生きて行く権利があり、自分が感ずることを正直に述べてよい権利があり、書いてよい権利があり、社会を自分達のものとしてよくして行き、明るく愉快にして行く、それでよろしいのだという時代が始まって来ました。ですから、文学もここで改めて考え直さなければならない。日本の民主主義の文学、民主的な文学の伝統は明治以来決してなかったわけではありません。第一、明治の初めはフランスの影響を受けて自由民権の思想が盛んで、男も女も一人の人民として平等の権利を持って社会を建設して行くべきだという観念があって、その頃の女は男と同じ教育程度を持つようになっていた。けれども、明治二十二年に憲法発布になって、日本は封建をひっくりかえして新しい日本になった筈だけれども、憲法が発布されると同時に、元の封建の方が都合がいいと思ってだんだんそういう風になった。女の教育も女学校が三十二年かにできて、女は内助者としての学
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