婦人の生活と文学
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)千々《ちぢ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四七年二月〕
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日本の社会の空気が、いくらかのびのびと各人の心持を表現させるようになってから、一年と少しの時が経った。けれども文学の面に、案外新人の進出が目ざましくない。この事実について、多くの注目がむけられている。新人の進出が思うほどはかばかしくないということのなかに、婦人の作家、詩人、戯曲家なども、どうして続々と出て来ないのだろうという疑問がふくまれているのである。
この数年間に、日本の女性が経験したことといえば、その人々一人一人にとって未曾有のことであった。同時に、日本の婦人の歴史にとって未曾有のことであった。行きずりの若い女の人の話がふと耳に入ると、その言葉の中には、その人が引揚げて来た遠い国の地名がいわれていたりする。生活経験というものだけが、文学を創る可能性であるなら、日本に婦人作家は輩出しなければならない。どんな人でも、語るべき一つの物語はもっているのだから。
青年たちにして
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