婦人の一票
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
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(例)[#地付き]〔一九四六年四月〕
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四月十日を目の前にひかえて、私たち日本の婦人は、生れて初めて行う選挙というものに対して、平然としていられない気持になっている。婦人が政治に無関心ということは、二、三ヵ月前の事実であったかもしれない。しかし、今日ではもう違って来ている。四月一日以来各家庭からとり上げられた二百円は、金高の二百円であらわしきれない大きい不安を、あまねく日本の国民の胸に烙きつけたのである。全有権者は、この生々しい不安と手にわたされた選挙場への入場票を見くらべて、深い思いにうたれるのである。
中年の家庭婦人は、政治に関心をもつひまさえ無い、といわれた。その暇さえ無いという今日の私たちの食生活の事情、嫁姑の問題などこそ、その婦人たちの一票によって解決の方向へ進まなければならない政治の課題である。
婦人の困難は、まだまだ山積している。第一、選ぶべき政党の判断に迷っている。或る政党の婦人候補者は、どんなに正しい党でも、少数党では議会で発言権さえ
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