与えられないのだから、多数党となりそうな党へ一票をやらなければ、貴重なあなたの一票は無駄になります、と機会ある毎に演説している。
一応尤ものようだが、もし多数党であるということにだけ値うちがあるならば、戦時議会は、党というものさえ抹殺した満場一致議会であった。その議会は「議会内における多数」という一握りの少数者の力で日本をこの有様にした。七十万人近くを殺し八百三十余万人の戦災者を出し、未亡人と遺児たちを作った。
私たちの人間らしいやりかたには、今はまだ小さくとも、納得出来る力を、自分たちのものとして守り立てて大きくして行くところにある。赤坊は、すぐものの役に立たない。資本家たちは手っとり早く役に立つ青年、婦人をしぼって来た。しかし母である女は、小さい希望を大きくもり立ててゆく愛と粘りづよさをもって、一人の子をも育てて来ているのである。私たち女が、目前の出来上っている力にだらしなく屈しては、ろくなことはない。事大主義にまけない、それが民主の第一歩であることを、私たちは心得ているのである。
第二に、婦人は婦人へ、ということも眉つばものと思われる。主人が戦犯で資格がないので、細君が身代
前へ
次へ
全4ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング