中に、養老院だの施療院だのという映画のセットのような実用にならぬものを当にして、見るべきものに目をつぶり、聞くべきものに耳を塞いで自分の歌ばかり歌って来た「家計簿の頁をくる代りに『国家、家族私有財産の起源』の頁を繰っていた視角からは、老後とか病時とかいう停滞の日は思うことも出来ない程生活は激しい流と見えた」ことへの反省であった。「財産――」一旦足蹴にして来たその地点に廻れ右しなければならなくなった「私」、その「私」に熱愛される「夫」である「彼も四十となり、情熱や感激に乗ってことをなす時は過ぎかかって、後半生は何に力を注ぐべきかを改めて思う年頃となった」(一人行く)
「こういう女」と「一人行く」との中には、このように意味深い人生過程の閃きが、いくところにかチラついている。日本の民主化の動き、そこにたぎる偽りのない熱意は、この作者にとって、微妙なそれらの諸点と、どういう角度で結ばれてゆくものであろうか。粘りづよい体温のたかいこの作者が、自由に作品の書けてゆく数にしたがってリアリスティックな客観性を深めひろめて、「こういう女」の蔵している真面目な諸モメントを社会的な視野で展開し、描き出して行
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