出発しようとする若い世代は、これらの亡霊的な影に、執拗に、巧妙に絡まりつかれないように自分を育てることが肝要である。
 作家の出版企業家風な動きは、株式会社鎌倉文庫に顕著であり、『婦人文庫』の中心的な一、二の婦人作家にも見られる。新円は彼等、彼女等を賢くして、利潤の再生産ということを理解させつつある。
 一方に、戦争の永い間、理性を封鎖されて暮した青年の間に、民主主義という、近代の社会政治の形態と本質との理解がのみこめず、暴圧の期間に蒙った精神の傷痕に拘泥してしか、社会と個性の発展を考えられない不幸な一握りの人々もある。
 文学の展望は、このように錯雑し、穢物に充ちてもいる。しかし、刻々に動く歴史の営みは偽りなくて、今日の紛乱と矛盾の下から、新しい日本の文学の、若く、愛すべき息づきが聴かれはじめた。『黄蜂』に「暗い絵」を連載している野間宏、『新日本文学』に「町工場」を発表した小沢清、『世界』に「年々歳々」を書いた阿川弘之。これらのまだ試作中と云える新人たちは、進歩的な知識人として、又勤労者として、既成の作家たちとは、全く異った素質に立って文学に歩み出している。たとえば「町工場」は、プロ
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