それは文学そのものの芯をとめる世俗性と俗見の世界への屈伏を意味するであろうということを。何故かと云えば、今日の富と閑暇とは、社会において支配者であり、権力をもつ人々の層に片よって持たれている。支配者と権力者とには彼等のものの考えかたとモラルとがある。それは支配する者らしく考え感じ権力をもちいるものらしく感覚する。そのおきて[#「おきて」に傍点]に服して得た経済の安定や閑暇に、どうしてウルフの希望するような「自由ある習慣」だの「思うことをそのまま書く勇気」などが期待されよう。文学のためにより人間らしい生活のために、真実私たちには、生活の安定と時間と、自由とが必要である。けれども、これらの必要は、既に存在する社会の歪んだ枠の一端に自分の生涯を屈従させることによって獲られたものであっては、明日の社会と文学とにとって、何の価値ももち得ない。私たちの生存の安定、人間らしいゆとりと自由とは、まだ私たちが獲ていない新しい社会生活の現実の価値として私たちにもたらされなければならないのである。人間精神の本質に横わるロマンティシズムというものは、このようにしていまだ人間社会が到達していないより複雑な、より
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