き加え、中央公論社の諒解も得て出版されることとなった。
よみ直して、あの時分精一杯に表現したつもりの事実が、あいまいな、今日読んでは意味のわからないような言葉で書かれているのを発見し、云うに云えない心もちがした。日本のすべての作家が、どんなにひどい状態におかれていたかということが、沁々と痛感された。今日の読者に歴史的な文学運動の消長も理解されるように書き直し、最後の一章も加えた。
近い将来に、日本文学史は必ず新しい社会の歴史の観点から書き直されるであろう。この簡単にスケッチされた明治以後の文学の歴史は、そういう業績のあらわれたとき、補足されなければならない幾つもの部分をもっているにちがいない。けれども、一人の日本の婦人作家が、日本の野蛮な文化抑圧の時期、自分の最もかきたい小説はテーマの関係から作品化されなかった期間に、近代日本の文学と婦人作家とが、どう生きて来たかということを切実な思いをもって追究した仕事として、主観的な愛着のほかに、何かの意味をもっているだろうと思う。
一九四七年三月
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