の事で関に失望しないのならこのまま自分は大阪にかえってよい、という米子を、真知子は説得する。「生れて来るものの為にも、あなたの為にも、寧ろあのひとのためにも」関から離れてはいけない、と。そして「私はもうあの人を愛しちゃいないんだもの。はじめから愛してたんじゃないのかも知れないわ――多分。愛してたとすれば、あの人じゃなく、あの人たちの考えかただったのよ」とひどく観念的に飛躍した心持におかれるのである。
他の作品では極めて用心ぶかくリアリスティックであろうとして来ている作者が、この作品では関という人物も真知子も観念的に動かし、飛躍することを許しているところは、今日読者の関心をひくところである。深い混乱は、婚約破棄の場面で関と真知子とがとり交す会話に一層まざまざと浮上って来る。
「少くとも君に対してどんな悪いことを僕がしたんです。君は僕を好きだと云った。僕を踏台にして環境を飛び越えようとした。僕も君は好きだ。君の飛躍に手を貸そうとした。それだけ」関は、大庭米子のことももし真知子が訊いたらば[#「もし真知子が訊いたらば」に傍点]話したであろうという。大庭への愛情は「亡くなった大庭(米子の兄)
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