左翼活動に入って今は学生でなくなっている関三郎という人物と知り合う。作者が関という人物を、どう描き出しているかということが興味をひく。東北の或る村の水車小屋の息子として彼は生れた。そして、社会発展の歴史の新たな認識は血の問題だという信仰をもっている。彼が下宿している窓の下に脳病院があって、そこから聴えて来る狂人の咆哮を、関は寧ろ痛快に感じて聞く。はじめは純文学の仕事をする積りだったという関、階級闘争に参加している一方ではギリシャの古詩を愛読しているということを、関の性格を語るモメントとして、作者は描いている。
関との初対面で真知子のうけた印象は、何て威張っているのだろうという気持と「変な不快さと気味悪さ」に交って「額と眼に特長のある蒼白な容貌には」文学をやっても屹度出来たのだわ、この人なら。と思えたという感想である。真知子をとおして代弁されている作者の、当時の青年の一つのタイプに対する感覚も面白く思われる。
河井という考古学専攻の資産家の息子から真知子に対して示される関心、やがて彼からの求婚、それに対する周囲の卑俗なよろこびかたに対する反撥が、次第に真知子の心に関の存在をあざやかに
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