活に対して、公然の疑問と反撥をもって、古い狭い枠を犇々と押したのであった。
片岡鉄兵の「愛情の問題」という小説は、当時、階級運動に従っていた男女の一部にあった誤った性関係の見かた――闘争への献身は、性的交渉について、女が自主的に選択し判断してゆく権利を棄てることである、という考えを、そのまま書いた作品として批判された。
これに対して、窪川稲子の「別れ」は、荒い波の間に闘いながら互の愛を守ってゆく夫婦の物語がかかれている。同時に「別れ」は女が母となる、という自然なよろこびさえ、当時の活動の条件では自然なよろこびとしてうけとれなかった痛苦の物語でもある。
この時代をめぐる前後の十年間に、家庭内の取材から次第に社会的な題材へと取材の輪をひろげて来た野上彌生子は、一九二八年(昭和三年)から長篇「真知子」を発表しはじめた。
東京の上流とも云うような生活環境に育っている真知子は、帝大文学部の聴講生だが、何ぞというと身分とか対面とかを令嬢としての彼女に強いる家庭と、その周囲の生活気分に絶えず苦痛を感じている。友人の米子が、経済上の理由から聴講をやめ職業につくことになったのがきっかけで、学外の
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