一次大戦後の経済恐慌によって未曾有な失業の問題が社会の前面に立った一九一九年以後、男女の失業、生活難による婦人の貞操問題がやかましく云われて、当時創刊された『婦人の国』などは「貞操十字軍の高唱」を標語としたほどであった。同時に、生活難に対する政策の一つとして、産児制限が常識のうちに当然のものとして地位を占めるようになったし、女にばかり向けられて来た「貞操」というものに、科学的研究が向けられるようになった。『青鞜』の時代、人格の問題としてだけ扱われた両性問題は、山川菊栄の訳した「結婚難・離婚流行の社会的研究」を『女性改造』が特輯したり、ベーベルの「婦人論」、エンゲルスの「家族、私有財産、国家の起源」などを背景として、婦人の社会的境遇と両性関係は、全く社会科学の光りに照らされはじめたのであった。山本宣治の生物学を基礎とした性科学論。法学博士浮田和民が生物学的立場から両性問題を進歩的に見ようとした「新道徳の中心問題と婦人の解放」。評論家厨川白村は、「近代文学十講」を書いた平明流達な筆致で、エレン・ケイの思想から一層社会性を稀薄にしたロマンティックな恋愛論を発表し、三宅やす子が、日本の習俗とし
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