らかに見られるものである。「放浪記」が書かれた当時の心持は「仕事してゆく自信、生きてゆく自信がなくなり」と言われている。女としてまた芸術家として自分の一切への絶望が感じられていたこの作者のこころもちも、昭和十年に当時を回顧してかかれた文章のなかでは「プロレタリア文学は益々さかんでした。私は、孤立無援の状態で」と、その対比のうちに何ごとかを含めるように言われていることも注目される。自分の仕事にも生存にも自信を失って海外旅行に出たこの作家が、二三年のうちには、「自分の感覚ばかりが逞しくなったが」日本の若い作家に軽い失望を感じ、「近年ロマン主義だとか能動精神だとか行動主義だとか言われるようになったけれども、誰も彼も詩を探しているのではないだろうかと思ったりもします」「日本の今の文学から消えているのは詩脈ではないかと思ったりしました。詩のない世界に何の文学ぞやと思ったりしました」と、自分の文学的世界を確信した。ひとたびは絶望した自身の詩性への自信が、どこから甦り何をよりどころとして再び獲られたのであったろう。どっさり新聞雑誌に連載した長い小説があるこの作者に、小説というものが「詩で言えば十行で
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