次第に一人の女として成長して来る生活のいろいろの断面が語られている。志賀直哉に師事したこの作家の作風は、甘さと誇張のない地味な、要約してリアルな描写力をもっている。婦人作家に共通な多弁や情緒の誇示、ポーズのない純潔な筆致であるけれども、その筆致に力を与え、テーマを人間的に一段高める気魄、常識以上の人生への態度のつよさが不足している。そのうらみは「光子」にも感じられた。
昭和二年七月におこった芥川龍之介の自殺は、そういう時代の空気に深刻な衝撃をもたらした。彼はプロレタリア文学運動に対して単純な保守ではあり得なかった。単純に反動であり得るために芥川龍之介は聰明すぎた。「敵のエゴイズムを看破すると共に味方のエゴイズムをも看破する必要」と云い、もし善玉、悪玉に分けてしまえるならば「天下はまことに簡単なり。簡単なるには相違なけれど――否日本の文壇も自然主義の洗礼は受けし筈なり」という附言とともに、「蒼生と悲喜を同うするは軽蔑すべきことなりや否や。僕は如何に考ふるとも、彫虫の末技に誇るよりは高等なることを信ずるものなり」と云った。同時に「新感覚派」の試みに対しても、芥川龍之介は、芸術上の冒険の一
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