共通の感情であった。『白樺』の人々は、武者小路実篤が云っているとおり、主義、主張が一つだというのではなく、めいめいがめいめいの立場をもちながら、それぞれの立場で「自分が情熱を感じて書けるものだけ書こうとし」「個人は個人に与えられた宝を出来るだけ立派にして地に生かして、そして死んでゆくことを人類は望んでいる。」「人類が全体として生長しようとする意志がある事実を認めること」を芸術の仕事への精励と不可分として感情に湛えていることで、自然派とは全く対蹠的な誕生をとげた。同時に『スバル』の象徴派とも、谷崎潤一郎などの色彩つよいネオ・ロマンティシズムとも、又、現実から一歩身を退かした漱石の文学態度とも別種の、人間の新しい肯定としてあらわれたのであった。
 個性の成長とその十分な開花の希望とを人類全体につたえたいからこそ仕事をするのであるという確信は、歴史の縦糸を辿れば、自然主義思潮に洗われて自己の目ざめを経た後でなければ、発生し得なかった動向であった。同時に、日本の自然主義が社会の伝統に風化されて、次第に小市民的な家庭生活の身辺描写に追い込まれて行ったのに対して、『白樺』は「殆どすべて食うことに困
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