確実な文学的評価をうけた。
 時期から云えば、水野仙子は最も強く自然主義の影響のもとに生い立つ婦人作家であった。田山花袋の文学に肯定できるものを見出したから、その家に寄寓もしたのであったろう。ところが水野仙子が自身の文学の境地として花袋からうけついだものと云えば、其は決して「蒲団」の世界ではなかった。寧ろ「田舎教師」に描かれている世界である。「田舎教師」で花袋が自然と人事とを見ているあの日常性、平凡事へこまかに向けられている人生的な目差し、周囲に対して激しく挑んでゆこうとする心を、終局には武蔵野の野末にこめる霧のなかへ溶し遣るような日本の伝統的な諦観の情緒。それらをうけて、二十三歳の水野仙子は「四十余日」「娘」など書いている。
 自然主義の文学運動が、小市民の何の数奇もない日常生活の中に小説として、人生を見出してゆく可能を示したことは、婦人作家にも限られた自分のぐるりにある生活環境の中から、小説をかいてゆくことが出来るということを理解させた。つくりものの物語でない生活の描写ということを眼目とした自然主義の写実精神は、水野仙子等の文学に、過去の婦人作家たちの小説の世界とは全くちがった生活
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