いながら彼等はやっぱり私共で飲食いし、平気で何をくれろとか、どうしてくれとか云っている。
 私は、自分のしていることが極く小さな、例えば金をやるにしても一時にまとまって一円とはやらず、着物にしても、新しいのばかりはやらないので、却って彼等の生活には、さほどの悪い影響も及ぼさないのだと思わないではいられなかった。
 若し私が、頭割に百円ずつもやったとしたら、彼等はその金の尽きるまではのらくらして暮して、また困って来ればどうかしてくれろと、よりかかって来るにきまっている。彼等に対してすることはいつも何でも限りがない。よしんば私が彼等の生活を助けようとして、自分の生計にも窮するほどになったとしたところで、彼等はやはり何か貰おうとする。何か呉れる所だと毎日せっせと押しかけて来るだろう。
 町の婦人連の仕事は、予想通り失敗したとともに、私には、自分は一体どうしたら好いのだ? という恐ろしい疑問が残された。この気持は、甚助のことのときにも私を苦しめた。けれどもあのときは、自分のしていることにかなりの自信を持っていたので、幾分は勢《いきおい》付けられていたのであった。が、今度は、自分のしていることが
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